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(3)考察
Figs.14から明らかなように、全周波数領域において、上甲板に越波を防ぐための遮波板を施したFBHP−3Ds型が、他のFBHPよりも消波効果に優れていることが分かる。特に、このFBHP-3Ds型はλ/B<4.0において、透過係数CTが0.4以下である。また、FBHP-3D型もF and T-Cond.で、λ/B<4.0において、透過係数CTが一部周波数領域を除いて0.5以下である。
これらの結果は、本研究で考案した平行板型浮消波堤が簡単な構造であるが、複数の消波堤を一定の間隔で独立に設置しても、短波長領域において従来の二次元的な浮消波堤以上の消波効果が得られることを示している。
平行板の間隔を平行板一辺の1/20にした模型の消波効果もFig.15から明らかなように、FBHP-3Ds’型がT−Cond.で、λ/B<4.0において、透過係数CTが0.5以下である。更に、FBHP-3D’型がF and T−Cond.でλ/B<3.5において、透過係数CTが一部周波数領域を除いて0.5以下である。
以上のことから、消波効果は平行板の枚数を増やし、その間隔を狭めることにより上げることができるということが分かる。
5.緒言
三次元模型実験結果が示すように、平行板から構成される立方体の形状をした単体の平行板型浮消波堤を、ある一定の間隔で必要なだけ設置すれば、十分な消波効果を得ることができる。また、必要に応じ複数列設置すればその効果はより大きくなるものと推察できる。
この平行板型浮消波堤は、平板から構成される単体をある一定の間隔で設置するため、静穏水域の海面が閉ざされることなく、しかも、その構造上から海水の循環を妨げるような問題は生じない。したがって、海水循環はほぼ開放水面の水域と同じであると見なして差し支えない。
また、閉じた海面が要求される場合、平行板型浮消波堤の単体を連結し設置すれば、ほとんど希望通りの海面が得られる。海面が閉ざされた場合、二次元模型実験からも明らかなように、より静穏な水域が得られることは明らかである。しかも、海面を閉ざしたとしても、平行板型浮消波堤の構造上から海水の循環を妨げるような問題は生じない。
どのような海域においても、静穏化する海域が定まれば、その海域に適合した形状に必要なだけ平行板型浮消波堤を設置すれば、静穏な海域が得られる。
本研究で提案している平行板型浮消波堤は、構造が非常に簡単で、透水性が良く海水の循環を妨げることがない。しかも、消波効果が大きく実用に供することが可能である。
謝辞
本研究を遂行するに当たり、ご協力頂いた脇山祐介助手と実験当時船舶工学科4年生の角島俊太郎、白垣栄一、花田達也、廣重憲司、前川武司、伊東明紀、牛越貴常、川崎芳登の諸氏に感謝の意を表します。
参考文献
1)大楠丹、柏木正、池上国広、尾崎雅彦、磯崎芳男:内部自由水を利用する浮消波堤の消波性能に関する研究、日本造船学会論文集、第169号、1991.5
2)(社)国際海洋科学技術協会編:浮防波堤―現状と課題―、1987.10

 

 

 

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